クラフトビールとは、小規模なビール醸造所で作られる、こだわりのビール、というイメージでしょうか。
ただ、現在はキリンやアサヒなどの大手メーカーも「クラフトビール」を販売していたりします。
いったい、クラフトビールの定義は何なのか?
考えてみれば、あまり詳しく知られていないですよね
結論から言うと、日本の場合、クラフトビールの定義は曖昧なのですが、この記事では、そんな事情を紹介しつつ、その歴史や楽しみ方についても紹介します。
クラフトビールのアメリカでの定義
アメリカでは、クラフトビールは下記のように定義されています。
クラフトビールの定義(アメリカ)
日本ビアジャーナリスト協会
●小規模である事
●独立している事
●伝統的である事
まず、上記3つについて紹介します。
小規模である事
「小規模」とは、年間生産量が70万キロリットル以下、とされます。
独立している事
「独立している事」は、クラフトビールメーカー以外の酒造メーカーに所有されていたりしない、という事。
伝統的である事
「伝統的である事」は、麦芽100%のビールを主力商品としているか、もしくは大半が麦芽100%のビールである事、とされています。
※味わいの特徴を強めるために、他の原料を使っている場合は麦芽100%にこだわる必要はない、とされています。
クラフトビールの日本の定義
では、日本ではどうか。
実は、これがけっこう複雑です
まずは「全国地ビール醸造者協議会」の定義が下記です。
クラフトビール(地ビール)の定義(日本)
●酒税法改正(1994年4月)以前から造られている大資本から、独立している。
全国地ビール醸造者協議会 ※抜粋して引用
●1回の仕込単位(麦汁の製造量)が20キロリットル以下
●伝統的な製法、もしくは地域の特産品などを原料としている、地域に根付いている。
上記は、全国地ビール醸造者協会によって、2018年に定められた定義です。
日本の「地ビール」・クラフトビールの始まり(歴史)
ここで話しがちょっと逸れて、日本の地ビール(クラフトビール)の歴史について。
日本では、ビールを作る為には「ビール製造免許」が必要です。
その製造免許を取る為には、年間で2000キロリットル以上のビールを製造しなくてはなりませんでした(1994年まで)。
その為、日本で流通しているビールは大量生産に向いていたラガービール、特にピルスナーというビールでした。
いわゆる「普通のビール」ですね。
酒税法改正によって始まった日本の地ビール
その状況が変わったのが、1994年の酒税法改正です。
法改正の規制緩和よって「2000キロリットル→60キロリットル」まで引き下げられたのです。
そうして、各地に地ビールの醸造所が続々と誕生しました。
2010年頃から呼ばれ始めた「クラフトビール」
その後、地ビールの流行が落ち着いて「クラフトビール」という言葉が出てきたのは、2010年前後です。
大手ビールメーカーの参入によって日本での定義が複雑に
アメリカでは、前述のようにクラフトビールの定義の一つに「小規模である事」があります。
しかし、日本では大手ビールメーカーも「クラフトビール」を販売し始めました。
キリンのホームページには、下記のように書いてあります。
日本ではクラフトビールの明確な定義はないと言われている。
KIRIN(クラフトビールとは)
キリンではお客様がそのビールを飲むときにどう感じるかを第一に考え、クラフトビールを造り手の感性と創造性が楽しめるビールと定義している。
日本のクラフトビールの定義は曖昧?
こうしてみてくると、日本の場合、「地ビール」の定義の名残もありつつ、実際にはけっこう曖昧なんだな、という印象です。
1994年の酒税法改正によって「地ビール」がたくさん誕生しましたが、その時点を日本のクラフトビールの始まりとするかどうか、というのもハッキリしないです。
まぁ、美味しければ定義は何でも良いのかもしれません(笑)
クラフトビールの種類とスタイル
そんなクラフトビール、基本的な種類はどんなものがあるのでしょうか。
ビールの発酵方法(ラガーとエール)
まず、ビールは発酵方法が主に2つあります。
下面発酵酵母を使用する「ラガー」と、上面発酵酵母を使用する「エール」です。
発酵の区分 | 上面発酵 (エール) | 下面発酵 (ラガー) |
特徴 | 上面発酵の「エール酵母」を使用。発酵温度は15~20℃くらいで、発酵が進むと麦汁の上部に酵母が浮き上がる | 下面発酵の「ラガー酵母」を使用。発酵温度は約10℃で、発酵が進むと酵母は沈殿する |
種類 | ・ペールエール ・ヴァイツェン ・スタウト等 | ・ピルスナー ・ミュンヘナー ※日本のビールのほとんどは下面発酵 |
この2つ以外の発酵方法で造られるビールもありますが、これを基本に、発祥地や原料等で細分化されます。
代表的なビアスタイル
2種類の発酵方法によって、様々なスタイルのビール(100種類以上!)が造られますが、その中でも代表的なスタイルを紹介します。
ピルスナー(Pilsner)
いわゆる「普通のビール」がこのピルスナー・タイプです。
19世紀にチェコのピルゼンで生まれたビールで、日本の大手ビールメーカーもお手本にした事から、日本国内では、ほとんどのビールがこのピルスナー・タイプになっています。
ペールエール(Pale Ale)
ピルスナー(普通のビール)から一歩進んで、クラフトビールにハマるきっかけになりやすいのが、このペールエールです。
ペールエールはピルスナーよりもホップの香りが強いですが、後述するIPAよりは苦味が控えめで、クラフトビール初心者にもオススメできる、そんなスタイルがペールエールです。
IPA(アイピーエー・India Pale Ale)
「クラフトビールと言えばIPA」というくらい、クラフトビール好きに人気なのがIPA(正式名称はIndia Pale Ale・インディアペールエール)。
前述のペールエールから、さらに香りや苦味を強くしたスタイルがIPAです。
柑橘系(グレープフルーツやオレンジ等)の香りと、しっかりした苦味はインパクトが強く、癖になる美味しさなんですよね。
IPAの中でも「アメリカンIPA」「ベルジャンIPA」「セッションIPA」など、種類があり、IPAにハマると新しい世界が開くかも(!?)しれません
ヴァイツェン(Weizen)
「ビールは苦いから飲まない」というような人にもオススメできるのがヴァイツェンです。
ヴァイツェンは苦味が少なく、フルーティーな香りなので、女性にも人気のスタイルなのです。
ヴァイツェン(Weizen)はドイツ語で「小麦」です。
通常、ビールの麦芽は大麦を発芽させたものですが、ヴァイツェンでは50%以上、小麦の麦芽が使われます。
なので、泡立ちの良さや白い濁り等、小麦由来の特徴を持ったビールです
フルーツビール(Fruit Beer)
果物(フルーツ)や果汁を加えて造られる、フルーツビール。
リンゴや桃、イチゴ、梨など、使用する果物によって香りも様々で、デザートと共に食後酒としても楽しめるビールです。
スタウト(Stout)
いわゆる「黒ビール」にも種類がありますが、その中でも覚えておきたいのがスタウトです。
スタウトは、香ばしいナッツやチョコレート、コーヒーのような香りが特徴です。
他のビールと割って飲んだり、生卵を入れたり、といった飲み方もされています
クラフトビールの楽しみ方
ここからは、クラフトビールの楽しみ方について。
色を楽しむ
ビールは、その色が数値によって40種類程度に分類されています。
淡い色のビールは数値が小さく、ギネスのような黒い色のビールは数値が大きくなります。
グラスを光に透かして、どんな色に見えるか、確かめながらビールを飲むのも、クラフトビールの楽しみ方の一つです。
※ビールの色については下記記事で詳しく紹介しています↓
香りを楽しむ
クラフトビールは、銘柄によって香りも様々です。
また、銘柄やビアスタイルによって、適した温度があります。
「キンキンに冷えたビール」だけではなく、クラフトビールの場合は、ぬるい方が香りが感じられる銘柄もあります。
ワインのように、グラスを回したり、じっくり香りも味わいたいですね
グラスのこだわり
ビールの色や香りを楽しむには、グラスにもこだわりたいですね。
「ビールジョッキ」は、居酒屋でガブガブ飲む、ラガービールには向いています。
しかし、じっくり味わいたいエールビール(多くのクラフトビール)の場合、ビールジョッキではなく、ワイングラスのようなタイプが向いています。
下記のように、いろんなタイプのグラスがあります
・パイントグラス
・チューリップグラス
・ヴァイツェングラス
・ゴブレット
料理とのペアリング
クラフトビールは多種多様なので、それぞれのビアスタイルに合う料理があります。
例えば、
香りが爽やかなペールエールにはハーブを効かせた肉料理、
重ための黒ビールには煮込み料理、というように。
「ビールペアリング」と呼ばれる、こうした楽しみも、クラフトビールの特徴です。
ビアパブでの楽しみ
こだわりのクラフトビールは、特に非加熱処理のものは、温度・品質管理に注意が必要ですが(ワインのように)、そういう意味では、美味しくサーブする店(ビアパブ)を選ぶのもまた、楽しみでもあります。
家飲みの楽しみ
クラフトビールは、小さな醸造所(マイクロブルワリー)が多いので、通販でしか手に入らない銘柄が多いです。
逆に言えば、通販を利用すれば、家飲みも楽しいのがクラフトビールの世界、だと思います。
近年は家庭用ビールサーバーも盛り上がってきていて、家飲みが更に進化している、クラフトビールの世界です。
クラフトビールは高い?
最後に、クラフトビールの価格について。
大手メーカーの一般的なビールと違い、マイクロブルワリー(小さな醸造所)のクラフトビールは高いです。
しかし、高い価格には理由があり、そのこだわりを知ると、それほど高くはない(リーズナブル)と感じます。
ビール好きとしては、美味しいビールがもっと増えて欲しいので、マイクロブルワリーを応援したいですね
まとめ
クラフトビールの定義(日本とアメリカ)に始まり、種類(発酵方法)やビアスタイル、楽しみ方まで、紹介してきました。
日本のクラフトビールの定義は曖昧、と書きましたが、クラフトビールの歴史は始まったばかりです。
今後「日本のクラフトビールの定義」がしっかりと確立していくのを楽しみに、今日も乾杯!
今回のお勉強はこれまでです♪
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